この講義では、仏教の歴史において人々がどのように空間を認識し、それを表現してきたかを考察する。
宗教的な空間、いいかえれば「聖なる空間」は、宗教を成り立たせるための重要な要素である。人々は寺院や教会などの宗教的な建造物をとおして聖なる空間にふれ、儀式や祭礼の場では主体的にそれにかかわる。聖地は文字通り聖なる場所であるが、それを巡礼することで、さらに大きな聖なる空間を形づくる。一方、聖なる空間が都市の構造を規定したり、宇宙全体の構造に反映されることもしばしば見られる。「あの世」のような言葉で呼ばれる異界や他界も、聖なる空間ととらえることができる。宗教的な絵画や彫刻に見られる空間表現は、聖なる空間を表すために、世俗的な絵画とは異なる独自の「法則」を有していることも多い。
このように宗教と空間の関係は、宗教学、コスモロジー、都市論、建築学、美術史などの領域にまたがる複合的なテーマである。この講義ではインドと日本の仏教を中心に、仏教における聖なる空間とは何か、それはどのような構造を持ち、どのように表現されたか、さらに、それは現代の空間論にいかなる意義を持つのか等の問題を、具体的な事例に即して考えてみたい。
<授業の予定と各回のテーマ>
第1回 4月12日 イントロダクション 授業の概要、予定、諸注意 第2回 4月19日 空間について考えること・思いつくこと レジメ Q&A 第3回 4月26日 空間についてのインド的理解・日本的理解 レジメ Q&A 第4回 5月10日 聖なる空間のイメージと表現(1) バールフットなど レジメ Q&A 第5回 5月17日 聖なる空間のイメージと表現(2) アジャンター レジメ Q&A 第6回 5月24日 聖なる空間のイメージと表現(3) 聖なる空間の固有表現 レジメ Q&A 第7回 5月31日 聖なる空間の構造(1) コスモロジー レジメ Q&A 第8回 6月7日 聖なる空間の構造(2) 異界としての地獄 レジメ Q&A 第9回 6月14日 聖なる空間の構造(3) 境界と異界 レジメ Q&A 第10回 6月21日 経験される聖なる空間(1) 寺院の象徴性 レジメ Q&A 第11回 6月28日 経験される聖なる空間(2) 儀礼空間としての寺院 レジメ Q&A 第12回 7月5日 経験される聖なる空間(3) 都市空間 レジメ Q&A 第13回 7月12日 経験される聖なる空間(4) 巡礼と聖地 レジメ Q&A 第14回 7月26日 まとめ 仏教の空間論はいかなる意味を持つか レジメ
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