平成19年度後期 仏教文化論(東方文化交流史・宗教学)

<講義題目>

エロスとグロテスクの仏教美術

<授業の目標>

アジアの仏教美術を、エロスとグロテスクという視点からとらえ、これまでの仏教美術研究では見過ごされてきたさまざまな姿を明らかにする。


<学生の目標>

仏教美術のもつ多様で豊穣なイメージを知るとともに、人間と宗教との関わりを、視覚芸術からとらえる。

<講義の目的および内容>

 一般にエロスもグロテスクも、およそ仏教や仏教美術とは無縁の概念と思われている。しかし、そもそも宗教というのは、R. オットーが『聖なるもの』で指摘しているように、ヌミノーゼすなわち「ぞっとさせるもの」「奇異なるもの」それでいて「人を魅するもの」を本質とする。実際、エロスもグロテスクも、洋の東西を問わず宗教美術の重要なテーマやモチーフとなっている。いずれも生と死という人間存在そのものにかかわる問題であるからである。
 この授業では、インドの初期の仏教美術に見られる女神像から、異形の姿の密教仏や、民間信仰の神々、ヒンドゥー教寺院のミトゥナ像、日本の地獄絵や曼荼羅図、秘仏にいたるまで、エロスやグロテスクと関わりのあるさまざまな図像を、インドと日本の仏教美術から紹介する。これらを通して、それぞれの地域と時代に固有の文化を知るとともに、全体を貫く普遍的な美意識や人間観を明らかにする。(参考文献はこちらを参照)


<評価>

出席状況(40%),学期中の小レポート(30%)各学期末のレポート(30%)


<授業の予定と各回のテーマ>

第1回 10月4日 イントロダクション 授業の概要、予定、諸注意
第2回 10月11日 とりあえず、いろいろ見てみよう レジメ Q&A
第3回 10月18日 ヤクシャとヤクシニー:古代インドの豊穣神 レジメ Q&A
第4回 10月25日 愛を交わすミトゥナ像:ヒンドゥー寺院の荘厳 レジメ Q&A
第5回 11月8日 残虐な絶世の美女:女神信仰とその造形 レジメ Q&A
第6回 11月15日 仏伝に登場する女性:蓮華色比丘尼と提婆 レジメ Q&A
第7回 11月22日 説話文学と性のモチーフ:『ジャータカ』から『今昔物語』まで レジメ Q&A
第8回 11月29日 絵巻を見るよろこび:地獄とか病気とか餓鬼とか レジメ Q&A
第9回 12月6日 地獄絵・六道絵・九相詩絵巻: 日本における身体観 レジメ Q&A
第10回 12月13日 安産法をめぐる考察:古代インドから平安時代まで(1) レジメ Q&A
第11回 12月20日 安産法をめぐる考察:古代インドから平安時代まで(2) レジメ Q&A
第12回 1月10日 馬頭観音と愛染明王:愛と性の仏たち レジメ Q&A
第13回 1月17日 秘仏を見たい:聖天、歓喜天、ダキニ天 レジメ Q&A
第14回 1月24日 密教の秘儀:立川流 とチベット密教 まとめ レジメ Q&A
授業のQ&Aをひとつのファイルにまとめました(pdf)