平成19年度前期 仏教学特殊講義

<講義題目>

仏教における空間論

<キーワード>

空間論、聖なる空間、他界観、儀礼、巡礼、遠近法

<レポートの課題>

授業の内容をふまえ、宗教的な空間のもつ特質と意味を、具体的な例を挙げて論ぜよ(哲学・思想、美術作品、遺跡、建築、都市、儀礼など)。仏教以外の宗教、キリスト教やイスラム教、神道などを題材にしてもよい。オリジナルな視点や斬新な切り口を期待する。

分量:四百字詰め原稿用紙5枚分(2,000字)以上

提出期日:8月10日(金)

提出方法:次のいずれかで提出してください。できれば(1)が望ましい。
(1) WebClass(アカンサスポータル)で提出
(2) メールでmmori@kenroku. kanazawa-u.ac.jp(返信メールを送るので確認すること)
(3) 森研究室(文学部3階 313)に持参

<講義の目的および内容>

 この講義では、仏教の歴史において人々がどのように空間を認識し、それを表現してきたかを考察する。
 宗教的な空間、いいかえれば「聖なる空間」は、宗教を成り立たせるための重要な要素である。人々は寺院や教会などの宗教的な建造物をとおして聖なる空間にふれ、儀式や祭礼の場では主体的にそれにかかわる。聖地は文字通り聖なる場所であるが、それを巡礼することで、さらに大きな聖なる空間を形づくる。一方、聖なる空間が都市の構造を規定したり、宇宙全体の構造に反映されることもしばしば見られる。来世、異界、他界も、聖なる空間ととらえることができる。さらに、宗教的な絵画や彫刻に見られる空間表現は、聖なる空間を表すために、世俗的な絵画とは異なる独自の「法則」を有していることも多い。
 このように宗教と空間の関係は、宗教学、コスモロジー、都市論、建築学、美術史などの領域にまたがる複合的なテーマである。この講義ではインドと日本の仏教を中心に、仏教における聖なる空間とは何か、それはどのような構造を持ち、どのように表現されたか、さらに、それは現代の空間論にいかなる意義を持つのか等の問題を、具体的な事例に即して考えてみたい。

<評価の方法>

出席状況(40%),学期中の小レポート(30%)各学期末のレポート(30%)

<授業の予定と各回のテーマ>

第1回 4月16日 イントロダクション 授業の概要、予定、諸注意
第2回 4月23日 空間について考えること・思いつくこと レジメ Q&A
第3回 5月7日 理念的な空間(1) インドの思想・哲学 レジメ Q&A
第4回 5月21日 理念的な空間(1) 日本仏教の考え方 レジメ Q&A
第5回 5月28日 聖なる空間のイメージと表現(1) 初期の仏教美術 レジメ Q&A
第6回 6月4日 聖なる空間のイメージと表現(2) 円環をなす時間 レジメ Q&A
第7回 6月11日 聖なる空間のイメージと表現(3) 遠近法をめぐって レジメ Q&A
第8回 6月18日 聖なる空間の構造(1) コスモロジーと輪廻図 レジメ Q&A
第9回 6月25日 聖なる空間の構造(2) 他界としての地獄 レジメ Q&A
第10回 7月2日 聖なる空間の構造(3) 境界と異界 レジメ Q&A
第11回 7月9日 経験される聖なる空間(1) 寺院の象徴性 レジメ Q&A
第12回 7月23日 経験される聖なる空間(2) 儀礼空間としての寺院 レジメ
第13回 7月25日 経験される聖なる空間(3) 巡礼と聖地 レジメ
第14回 7月25日 まとめ 仏教の空間論はいかなる意味を持つか
全Q&A(PDF)

授業の参考文献


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